風が吹けば桶屋が儲かると言いますが、では本当に風が吹いたら桶屋が儲かっているのでしょうか。江戸時代などにそのようなことが起きたかもしれませんが、よほど条件が揃わないと成立しないのではないでしょうか。
では金利を下げれば物価が上がるというのはどうでしょうか。日本は2013年より量的・質的金融緩和を導入して、金利を下げたりETFを買い入れたりして、2%の物価安定目標の達成を目指していますが、全く目標に到達する気配がありません。
これは金利を下げれば物価が上がるという理論構成が日本という社会構造には適合しなかったということです。屁理屈だったというわけです。誤りは早く認めて次にいくべきです。
金利を下げれば物価が上がる理論構成
金利が下がると、企業や個人がお金を借りやすくなる
家を買おうと考えている人がいたとして、金利0.5%と金利5%だと0.5%の方が家を買う気になりそうなのは分かりやすいですよね。企業だと新しい工場を建ててみたりとか、そういった需要が増えることはイメージできます。
でもすでに家を持っていたらたとえ金利0.5%でも家は買いませんよね。今の工場で十分であれば、新たに工場を建てる必要もないですよね。金利を下げることが、直接的に需要を増やすことはありません。ただ人によって判断は違うのである程度の効果はあるのかもしれません。
ある程度金利を下げるとある程度借金をしてでも消費して需要が増えます。この直接的な需要増加分をとします。
企業や個人が儲かる
需要が増えると、物が売れ、物を売った人たちは儲かります。企業が儲かれば、従業員の給与が増えることが期待できます。
もちろん物を沢山売れば売るほど売り上げが増えて、利益を増やすことにつながります。しかし売上利益率もあるし、利益が増えても従業員の給与に必ずしも反映されるとは限りません。
需要増加分からある利益率で利益が増え、更にある割合で利益から給与に反映されるとします。
企業や個人がお金を使う
ここまでは一部の業種の需要が増えただけですが、企業や個人の収入が増えると、それを使って他の業種に対しての需要も増えていきます。
収入が増えると使うお金が増えるとも限りません。必要以上に使うお金を増やしたりはしないのではないでしょうか。もちろん効果が無いわけではないので、増えた収入からある割合が市場に流れるとします。
需要Dによって更に創出された需要がとなることになります。創出された需要により更に需要が創出されていきます。とするのであれば、結果として金利を下げることで創出される全需要は
$$G = D\times(1+n+n^2+n^3+…) = \frac{D}{(1-n)}$$
となります。
需要が増えれば物価が上がる
供給が需要に追いつかない場合、物の値段は上がります。これは絶対にそうですが、基準が揺らいでしまったらどうでしょうか。ここで基準というのは円の価値です。円の価値が上がると相対的に物の値段が下がります。物の値段が多少上がっても、それと同時に円の価値も上がれば、物価は変わらないといえます。ただ今回はこの話は無視して円の価値は変わらないとします。
nを増やせば物価が上がる
例えばが0の場合は、直接借金して増えた需要しか経済効果がないことになります。これでは土地の値段とかは上がるかもしれませんが、他の物価は上がらないことになります。を増やさないといけません。は利益率と利益を給与に回す割合と増えた収入を支出に回す割合の掛け算になります。
やはり日本社会は保守的過ぎる
高付加価値サービスを提供するのではなく、薄利多売のビジネスが好まれたり、経営者は増えた利益を給与に反映することなく、財務基盤を強化するため自社株買いを行ったり、借金返済を優先します。多少給与が増えたとしても、老後の不安もあり支出を増やすことなく貯蓄に回したり、住宅ローンの繰り上げ返済をします。
もしもこのような行動を日本社会がとっていると、が0に近づくことになります。これでは金利を多少下げたところで何の効果もないことが分かると思います。
利益率が100%として、増えた利益を全て給与に回し、増えた給与を全て支出に回すのであれば、無限大の経済効果を産むことになります。しかし全て限りなく100%に近づけなくては効果は劇的に減少します。企業も個人もお金をしっかり回す必要があるのです。果たして日本社会はそこまでできるのでしょうか。
まとめ
今回の数式はかなり雑で漏れもあるのですが、言いたことは金利を下げると物価が上がるというのは、複数の要素が全てうまくいかないと成立しない理論構成だということです。
また厄介なのは、もうすでにある程度効果が出ているのであれば、もう少し頑張れば大きな成果を出せるのですが、今のように効果が出ていない状態では、かなり改善しても小さな成果しか出せないことです。
こうなると今のやり方はあきらめて、全く別の方法を考えるしかないと思います。
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